蜜色トライアングル ~String of origin
「木葉」
圭斗の声に、木葉は運転席を振り返った。
圭斗は運転しながら静かに口を開く。
「実を言うと、おれはまだ信じられない。木葉がアメリカに行くなんて……」
「圭ちゃん……」
「でも現実なんだよな。木葉は由弦を選んだ。……他の誰でもない、由弦を」
くすりと圭斗は笑う。
自嘲するようなその笑顔に、木葉は眉根を寄せた。
「……幸せになって、木葉」
「……圭ちゃん……」
「木葉が幸せにならないと、おれも諦めきれない。だから……」
圭斗の優しい笑顔にどこか苦しげな影が混じる。
何を諦めるのか、木葉にはよくわからない。
……が。
多分、触れてはならないのだろう。
木葉は何となく感じ取り、前を向いて頷いた。