ホストなんて大嫌い!?
どれだけ走ったのかわからない。

とりあえず瞬の家を出て

走れるだけ、走った。

周りの冷たい視線を浴びながら…

スエットのまま、何も持たずに

ただ、ひたすら走った。

日曜日の午前中。

お出かけをする家族やカップルで賑わう街を

スエットで全力疾走する、若い女。

ただそれだけで、視線が痛い。

自分がどこに居るのかも分からない状態で

とりあえず、すぐそばの公園に入る。

自分がどのくらいの距離を走ったのかも分からないが

かなり息が上がっている。

ゆっくり深呼吸をしながら、ベンチに座る。

休日の公園は親子連れが楽しそうに遊んでいる。

「いいなぁ…」

父親が早くに亡くなってる私にとって

親子でどこかに出かけたり

なんて記憶は全くない。

お父さんに肩車されてる子供を見るたび

とてつもなく、羨ましくなる。

お父さんと楽しそうに手を繋ぐ子供を見ると

どうしようもなく、涙が溢れてくる。


だけど、その寂しさを誰かに言った事はなかった。

お父さんが死んで、お母さんが仕事をするようになってから

ずっと強がってきた。

仕事で頑張るお母さんを心配させたくなくて

初めての出張で家を空けるお母さんに

「一人で平気?」って聞かれて

笑顔で大丈夫って答えたり…

友達の前でも同情なんか欲しくなくて

ずっと強がってきた。

強い自分を演じてきた。

弱い部分を誰にも見せたくないから。


…だから、だから瞬の言葉に

余計にイラッとした。

同情が含まれてるような気もしたし

瞬と一緒に居れば、絶対に弱い自分を隠せないから。


いろんなことを考えていると、また

涙が溢れ出した。






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