銀色の、雨ふる国
「リルカ、食事の支度ができたよ。ローザと、2人で降りておいで」
開け放たれたままのドアをコンコンとノックしてから
ぼくは部屋の中、ベッドの中で丸くなっているリルカとローザに声をかけた。
2階の南向きにあるこの部屋には
雨がふっていなければ、今の時間気持ちの良い陽射しが入る、大きな大きな窓がある。
けれど、今窓の外から射し込むのは
どんよりとした、憂鬱な鈍い光。
「・・・うん。さっきは、ごめんなさい」
モソモソと毛布をめくって、ベッドから抜け出してくるリルカの瞳は珊瑚色のローザのそれよりも赤い。
またリルカに悲しい思いをさせてしまった・・・
「やむといいな、雨」
「うん。ローザも・・・枇杷の木にのぼりたいって。爪も、ガリガリ」
「みゅーあ」
リルカに遅れて、ベッドから顔を出したローザをぼくは抱き上げると、リルカの背を軽く押して、1階へと誘導した。