銀色の、雨ふる国
-2x01/3/17-
「兄さん、傘を差して、出かけてきてもいい?」
あの頃のぼくと同じ年になったリルカは、ついと背伸びをして
南向きの出窓から外の風景をしばらく眺めると、ぽそりと、小さな声でつぶやいた。
窓の外には、リルカが大好きな枇杷の木が、サラサラとふり続く冷たい雨に濡れている。
「だめだよ。最近の雨は、こわいんだから。リルカだって知っているだろう?それより、部屋の片付けは終わったのか?」
そして、十歳になったぼくは、リルカが可愛いあまりに、やたらと神経質で、どちらかと言うと口やかましい『兄さん』になっていた。
でも、それは、仕方のないこと。
何日も父さんと母さんの留守が続く、この家で
リルカとローザを守るのは、ぼくしかいないのだから。
銀色の雨なんか浴びて、可愛いリルカに、万が一のことがあったら大変だ。