銀色の、雨ふる国
「兄さん-eden-にも枇杷の木はあるかなぁ・・・」
出発の日、車の後部座席で、窓にペタリと両手をあてて
雨に打たれる枇杷の木を見つめながら
寂しそうに、悲しそうに、リルカが小さく呟いた。
初夏になると黄色く熟れる枇杷の実が、リルカと母さんの好物だった。
庭の枇杷の実は『危険』な為
リルカの口に入るのはマーケットで買った、銀色の雨があたらない物ではあったのだけれど。
それでも毎年、小鳥たちがその実をつつく姿を見ては
得意げな顔で木に登るローザに注意をしながら
にこにこと可愛い笑顔を見せていたリルカ。
まだ時々、陽が射していた、この庭で。
銀色の雨が唯一きれいに見える雨露となって
キラキラと、緑を濡らした、この庭で。