銀色の、雨ふる国
「リルカ、行きたくないなぁ・・・」
雨露より眩しく輝いていたリルカの笑顔は
今は曇り空に変わり
「みゅーあ」
ぼくの膝の上に乗るローザの声も、いつもよりも悲しそうに聞こえた。
「さあ!出るわよ。大丈夫-エール-は都会だから、リルカもレントも、すぐ気に入るわよ」
車内の暗い雰囲気を一掃するように、明るい声で母さんがリルカを宥めると
「・・・・・・」
父さんは、無言でアクセルを踏み、ぼくらを乗せた車を発進させた。
誰も、何も話せずに
サラサラと止むことのない薄暗い雨の道を
振り子のようにワイパーを揺らしながら、車は走る。
ぼくらの育った家がリアガラスから完全に見えなくなった時に
ずっと唇をかみ締めて声を殺していたリルカが
声を上げて、泣いた。