蜜色トライアングル ~Winter Blue
一章
1.汚れた手
<side.冬青>
――――疲れていると、嫌な夢を見るらしい。
冬青は夢うつつの中、遠い昔の記憶をぼんやりと思い出していた。
あれは、6歳の時。
香港・旺角の雑居ビルの一角。
白い煙が立ち込める部屋の中、冬青は女達を相手に『仕事』をしていた。
『……冬青、もっと……そうよ。ああ……』
冬青の小さな指が女の体の奥に触れる。
自分より何倍もある女の躰。
まるで大きな肉の固まりのようなそれを相手に、冬青は『仕事』をしていた。
『そう、そこよ……っ……』
冬青の指は女の感じる部分を正確に刺激し、高める。
指先だけの感覚で、女が感じる部分がなんとなくわかる。
手技の天才と呼ばれた少年は、その怜悧な瞳で体をくねらす女を見つめていた。
『あんたが、あと10年早く生まれていれば、ねぇ……』
『……』
『その美貌、その青い瞳。……さぁ冬青、私にあの瞳を見せて……』