蜜色トライアングル ~Winter Blue
5.一筋の光
翌週の月曜。
冬青が事務所を出ると、玄関のところに見覚えのある女が立っていた。
「お久しぶりね、冬青さん」
小野寺馨だ。
馨は艶やかな黒髪をなびかせ、黒いスーツを身に着けている。
冬青は馨の姿を見、足を止めた。
「このところ、木葉ちゃんに全然連絡つかないから、直に来てみたの」
「……」
「冬青さんが何か事情を知ってるんじゃないかって思ってね」
紅い唇を歪め、馨は笑う。
冬青はそれをちらりと一瞥し、脇を通り過ぎようとした。
「あんたには関係ない。……失礼する」
「あら、いいのかしら? 私があのマンションに行っても?」
馨は妖艶な瞳でふふ、と笑う。
冬青は足を止め、馨に向き直った。
「女優の力って便利なのよ、いろいろとね」
「……」
「喫茶店にでも行かない? ……お話ししましょ」