蜜色トライアングル ~Winter Blue
五章
1.告白
その日の夜。
冬青がマンションに戻ると、木葉はテーブルで雑誌を読んでいた。
その顔はどことなく青ざめ、生気がない。
足に繋がれた鎖が無機質な光を放っている。
しかし冬青の顔を見ると、木葉は嬉しそうな笑顔を見せた。
「おかえり、お兄ちゃん」
木葉は笑顔で冬青を見上げる。
冬青は胸の痛みを感じながら、ネクタイを緩めた。
「今日は煮物と野菜炒めだよー。ちょっと待ってね……」
木葉は立ち上がり、キッチンの方へと歩き出す。
鎖がシャラシャラと音を立てる。
一見家にいた頃と変わらぬ光景だが、足の鎖に強烈な違和感を覚える。
「……木葉」
冬青はキッチンに向かいかけた木葉の背を後ろから抱きしめた。
……艶やかな黒髪。
自分と同じシャンプーの香り。
突然抱き締めた冬青を、木葉は慌てた様子で振り返った。
「……どっ、どうしたの、お兄ちゃん?」
「話がある」