蜜色トライアングル ~Winter Blue
くたっと力が抜けた木葉の背を抱え込み、冬青は大きく息をついた。
どうやら、少し落ち着いたらしい。
木葉の背を抱いたままテーブルの上を見ると、グラスが目に入った。
グラスは二つあり、片方にべっとりと口紅がついている。
「やはり、あの女か……」
グラスの横にはアルミの薬のガラが落ちている。
その薬に冬青は見覚えがあった。
『タルゾート錠』。
あの香港の売掘で何度か目にしたことのあるそれは……。
「媚薬か……」
正確には体の興奮を高める薬だ。
さほど強い薬ではないが、酒と混じると多少頭がぼうっとすることがある。
木葉は冬青の腕の中で苦しそうに身じろぎしていた。
「苦しいのか?」
「……っ、お兄ちゃん……」
木葉はシーツを胸の前で握りしめたまま荒い息を繰り返している。
腿をこすり合わせる姿は、相当苦しそうだ。
冬青は木葉の苦しみを取り除く方法を知っていた。
が、この穢れた手で触れるわけにはいかない。