蜜色トライアングル ~Winter Blue
「ねぇ木葉。あいつがどうしてこれまで彼女とか作らなかったか、考えたことある?」
「えっ……」
「あいつね、ずっと前から心に決めてる人がいるのよ」
「……」
「というか、その人以外は生理的にムリって感じね。どんな美女でもサル並みの扱いよ」
サル並みって……。
驚く木葉に凛花はグラスの水を一口飲み、続ける。
「でも運悪く、それが道ならぬ恋ってやつでさ。ずっと抑えてるけど、抑圧されてる分、解放されたらどうなるかわからない。……そんな危うさがあるわ」
凛花の言葉を木葉は呆然と聞いていた。
兄に恋人がいなかった理由……。
それは木葉もこれまで何度か考えなくもなかった。
けれどまさか、心に決めた人がいるだなんて……。
――――信じたくない。
青ざめた木葉に、凛花はため息交じりに続ける。