蜜色トライアングル ~Winter Blue
4.二人の生活
そんなことになっているとは露も知らない木葉は、冬青が去った部屋でぼんやりとパイプベッドに座っていた。
確かに由弦と会わなくていいというのは、ちょっと落ち着く。
今の由弦にどう接すればいいのか、木葉もまだわからない。
あれから冬青は食材と着替え、洗面用具、雑誌などを持ってきた。
が、携帯はない。
『場所が割れると厄介だ。携帯はしばらく家に置いておく』
兄の言葉を、木葉は不可解な気持ちで思い出した。
兄の考えていることはわかる。
自分と由弦の心が落ち着くまで、距離を取らせるつもりなのだろう。
が、この状態は普通に考えたら『軟禁』だ。
ゆっくり考える時間ができたのはいいが、この状態がいいのかというと微妙な感じもする。
兄が鍵を持っている以上、無施錠で出かけるわけにもいかないし……。
けれど、好きな人がいるはずの兄が自分のためにここまでしてくれるのは、嬉しい。
なんだか大事にされているような気分になる。
兄は昔から過保護な部分があった。
妹にすらそうなのだから、恋人ができたらもっと過保護になるのだろう。
その相手は誰なのか……。
ショートカットの女性を思い出し、木葉はそれを振り払うようにぐっと目を瞑った。