蜜色トライアングル ~Winter Blue
三章
1.兄として
<side.冬青>
木葉と暮らし始めて5日。
冬青は今日も遅くまで会計事務所で仕事をしていた。
木葉のためにと思いあのマンションに連れて行ったが、そろそろ自分の理性も危うい。
――――予想はしていたが、予想以上に厳しい。
木葉のために、兄に徹する。
そう自分に言い聞かせても、木葉の寝顔や風呂上がりの姿を見ると、押し込めた想いが湧き上がってくる。
木葉の腕を取り、抱き寄せたくなる。
そしてそうなった場合、もう抑えが利かないだろうと自覚していた。
「……木葉……」
自分だけ家で寝れば良いかとも思ったが、木葉を一人残して何かあったら取り返しがつかない。
であれば夜遅くまで時間をつぶして帰るしかない。
と、事務所の玄関を出た時。
「冬青」
脇から呼びかけられ、冬青は足を止めた。
見ると、夜闇の中に長身の影が浮かび上がる。
圭斗だ。