蜜色トライアングル ~Winter Blue



「冬青。……ひとつ、聞きたいことがある」


そろそろ来るかと予想していた冬青は静かな声で答えた。


「なんだ?」

「木葉をどこへやった?」


圭斗の声は低く、剣呑だ。

恐らく木葉が一度も聞いたことのない声だろう。

冬青は努めて冷静な声で言った。


「圭斗には関係ない」

「関係ないわけがないだろう。木葉は大事な従妹だ」


圭斗は一歩、冬青に近づいた。

その眼鏡の奥の瞳は刃のように鋭く、氷のように冷たい。

その表情にはいつも木葉に見せている優しげな様子は全くない。


「精神的に不安定だから安全な場所へ隔離しているだけだ。数日経ったら家に戻す」

「安全な場所、だと? ……笑わせるな」


圭斗は低い声で言い、また一歩冬青に近づいた。

その目には怒りと、抑えられない嫉妬の色がある。


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