蜜色トライアングル ～Winter Blue

その後。

母を助けてくれた男性は日本人で、山神と名乗った。

仕事で日本人を相手したこともある冬青は、カタコトの日本語で自分たちのことを説明した。

山神は日本の商社に勤めるサラリーマンで、香港には出張で来ていたらしい。

その後、山神は何かと親子に便宜を図ってくれるようになり、母と山神は急接近した。


そして、冬のある日。

山神は3枚の航空券を親子に差し出した。


『僕は来月、日本に帰る。君たちも一緒に来てほしい。日本で本当の家族になろう』


その言葉に母は涙した。

そして翌月、山神と共に冬青達3人は日本へと旅立った。




日本に着いてすぐ、母と山神は入籍し、晴れて夫婦となった。

冬青と由弦も彼の養子となり、4人での生活を始めた。

穏やかで幸せな生活だったが、それは長くは続かなかった。

――――日本での生活を始めて2ケ月目。

母と山神が乗った車が事故に遭い、母は他界し山神は植物状態となった。

事故が本妻の手によるものなのか、単なる事故だったのかはわからなかった。