蜜色トライアングル ~Winter Blue
夜中。
カタンという物音に木葉は目を覚ました。
灯りが落とされた室内は薄暗く、かろうじて周りが見えるだけだ。
ユニットバスのあたりに黒い影が見える。
恐らく兄だろう。
兄は木葉が起きたことには気づかない様子で木葉のベッドの方へと歩いてくる。
木葉は慌てて目を閉じた。
「……」
冬青は木葉の頭に手を伸ばし、さらっと髪を撫でた。
その手はどこまでも優しい。
木葉は布団の中で身を固くしながら、泣きそうな心でじっとそれを感じていた。
兄は私に優しい。
それは自分が妹だからなのだろう。
でなければ、一緒の部屋にいること自体、できないはずだ……。
「……っ……」
苦しい。
こんなにも……苦しい。
もう、一緒に過ごすのは限界かもしれない。
離れていれば気にならなかったものが、一緒にいると気になってしまう。
家に帰れば由弦がいるが、冬青と一緒にいるよりは精神的にマシな気がする。
――――明日、家に戻ろう。
木葉は決心し、目を閉じた。