蜜色トライアングル ~Winter Blue



「あのね。……明日、家に帰ろうと思うの」


木葉の言葉に冬青は眉を上げた。

訝しむように木葉を見る。


「なぜだ? ……由弦のことは決着ついたのか?」

「ううん、それは……」

「では、なぜだ?」


冬青は冷静な声で問う。

その冷静な声に、木葉は自分の胸が疼きだすのを感じた。


どこまでも冷静な兄。

それに比べ、自分の心はひどく揺れ動いている。


胸の奥から切ない想いが溢れ出す。

木葉は俯き、呟いた。


「つらい……の……」


押し殺すような声で言った木葉に、冬青は目を丸くした。

木葉は冬青から視線をそらし、苦しげな声で続ける。


「ここにいるのが、辛いの……」

「なぜだ?」

「……っ……」


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