蜜色トライアングル ~Winter Blue



冬青は桐沢流剣術師範、短杖術三段、その他短剣術や体術にも長けた凄腕だ。

もとより敵うはずがない。

だが、黙っていることなどできはしない。

由弦は右手の拳を繰り出した……が。


「……ぐっ!」


冬青がすぐさまその拳を抑え、由弦を床に叩きつける。

上から見下ろす冬青を、由弦は睨み上げた。


「……兄貴。木葉をどうするつもりだよ……」

「……」

「木葉は兄貴のこと、ずっと兄貴だって思ってたんじゃねぇのか!? その兄貴が、こんなっ……」


言い募る由弦の首から手を離し、冬青は立ち上がった。

その背は厳しく、迷いがない。


「……俺は、木葉を守る」

「……っ」

「そのためなら遠慮も容赦もしない。……覚えておけ、由弦。お前も俺の邪魔をするなら排除する」


冬青は冷厳な声で言い、倉庫の方へと歩いていく。

由弦はなすすべもなくその背中を見つめていた。



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