蜜色トライアングル ~Winter Blue
<side.冬青>
深夜。
部屋に戻った冬青はスーツを脱ぎ、ベッドに横たわる木葉を見た。
その顔は年の割にはあどけないが、どことなく色気が漂っている。
幼い頃。
『おにいちゃぁん……』
木葉はよく怖い夢を見たと言っては冬青のベッドに潜り込んできた。
触れてはいけないと思いながらも、冬青は自分に縋りついてくる木葉の温かさに安らぎを覚えていた。
それが辛くなってきたのは、いつの頃だったのか……。
信頼に満ちた目で自分を見上げる木葉。
それなのに、自分は……。
「……木葉」
木葉は年の割にはしっかりしていたが、母を早くに亡くしたことで寂しさを心に抱えるようになった。
由弦の前では姉らしくしっかりしようと振舞っていたが、冬青の前でだけは寂しさを覗かせることがあった。
それが、冬青の心を雁字搦めにした。