蜜色トライアングル ~Winter Blue
それから月日は流れ……。
冬青は香港にいた頃には予想もしなかった幸せな日々を過ごした。
暖かい家、暖かい家族。
――――そして、剣術。
竹刀をふるっている間は、自分の穢れた手のことを忘れていられた。
『お前の剣には凄みがある』
ある時、冬青は父・清二にこう言われたことがある。
恐らくそれは幼い頃、香港で生身の人間を手にかけたことがあるからだろう。
冬青は父には言わなかったが、父はなんとなく察していたようだ。
冬青の剣に比べ、由弦の剣は『護る剣』だ。
敵の攻撃を受け流し、封じる。
それは自らと敵、双方を護るための剣だ。
しかし冬青の剣は、護るだけではなく攻撃することを知っている。
そしてそうなった場合、敵に対し一切の容赦はない。
『時代が違えば、お前は修羅になっていたかもしれんな』
父は冬青の剣の才能をいち早く見出したが、同時に心配もした。
幼い頃からいろいろなものを見過ぎてきた冬青は、剣の腕だけではなく精神的にも早熟していた。
しかし。