ウソつき恋唄
ピンポーンと間の抜けたチャイムが鳴った。
慌てて、バッグを手に持って部屋を出ようとした時、窓際の棚の上に置いてあるそれを見て立ち止まった。
ピンクの髪飾り。
小さい頃、猛くんがくれたものだ。
使うときが無いし、美南ちゃんのことがあり、使う気も無くして、
突然ただ行き場を無くしたそれは、今もそこで鮮やかに色を発していた。
「―――…」
ぞっと手にとり、髪に挿してみた。
染めたばかりの焦げ茶色の紙にマッチしている。
外そうと一瞬思ったが、すぐに
その考えを頭の隅に追いやった。
「さくらーっ!
猛くんが来てるわよーっ」
「はーい!」
鏡に映った自分に小さく笑いかけてから、部屋を出た。