ウソつき恋唄
「……おっす…」
「お、おっす…」
久しぶりに見る私服の猛くんが発した「おっす」に少しだけ動揺しながらも同じ言葉を返してみる。
「…行くよ」
「うんっ」
いつもより少しだけ素っ気なく猛くんはそう言って歩きだした。
何故か恥ずかしくて、その数歩後ろからついていく。
なんとなく見えた猛くんの足元を見ながら胸がいっぱいになった。
長い足を遅く交互に動かして、ただでさえのろまな私に合わせてゆっくり歩いてくれている。
「いい夜だな。」
「……うん。」
言葉が出なくなった。
沈黙が訪れた。
祭り会場に近付くと、だんだん人が多くなって何度か猛くんを見失いそうになる。
「あっ…猛くん、待って…?」
その度に、猛くんは
黙って立ち止まった。
だがやがてしびれを切らしたかのようにチッと舌を鳴らした。
「めんどくせえな。ほら。」
差し出されたのは大きな手。