ウソつき恋唄
瞬時迷ってからその手を握る。
冷たくて、大きい。
「ほら行くぞ。さくらのペースに合わせてたら露店一個もまわらないうちに花火おわっちまう。」
「わあひどいっ。
そんなことないもん…!」
相変わらず口の悪い猛くんだけど、
今の私なら分かる。
意地悪な物言いは全て、口数が異常に少ない私を心配してるだけなんだ…
今頃、美南ちゃんは何してるんだろう。
もしかしたら、相川くんとお祭りにいるのかもしれない。
「さくら…?大丈夫か?」
「えっ」
「気分わりいの?」
「えっ…ああ、ううんっ。考え事してた。……あっ。私、綿菓子食べたーい。」
「綿菓子?そういえばお前、昔から甘いもの好きだったよな。」
「ああ、覚えててくれたんだ…」
「……まあな。」
ああ、綿菓子屋さんはあっちだ。
綿菓子屋さんを見つけたらしい猛くんは少し強引に私の手をひき、歩いた。