ウソつき恋唄
遠くで、みんみんと、短い蝉の声がした。
そうか、もう夏か。
半袖からはみ出た腕に当たる風さえ生暖かい。
猛くんのシャツなんて、汗でビタッとしてる。…ああ、そっか。男バスは今日、顧問が居ないから休みなのか…
ただ、無言の時間が二人を包んだ。
それでも、不思議と居心地は悪くない。
蝉たちがオーケストラを奏で、木たちは私たちを見下ろしている。
夏は騒がしい季節なんだ。
何分かして、猛くんが口を開いた。
「……おれが…一緒に行こうか。」
「えっ?」
「相手、いないんだろ。…その…おれが行ってやっても…いいけど」