エトセトラエトセトラ
「いい加減目を覚ませよ、お姫さ、ま……」
見つめ合ったまま決め台詞を呟く彼の言葉がふと途切れる。
私たちの間に空いたわずかな隙間にひらりと舞い落ちたのは、一枚の桜の花びら。
「……なんでこんなとこに桜の花びらが……」
舞い落ちてきた花びらをつまんで訝しげに持ち上げる彼。
すると、次から次へと桜の花びらが舞い落ちてきた。
「なんだこれ?」
ひらひらと舞う桜の花びらに目を丸くして顔を上げた彼が、私を見て息を飲んだのがわかった。
「おま、え……」
私は自分の両手を見つめ、諦めたように息を吐いた。
「あ〜あ」
指先からほろほろと崩れて桜の花びらになっていく私。自分では見えないけれど花びらが降ってきているということは頭のてっぺんからも崩れていっているのだろう。
桜の勢いが増していく。急激に形を失っていく自分を感じながら、ははっと笑って私は言った。
「だから言ったのに」
最後に見えたのは、泣きそうになった彼の顔。面白いくらいに眉がハの字になっている。
(最後にそんな顔を見れて、満足)
そんなことを思った瞬間、目の前が桜の花びらで埋め尽くされ、彼が見えなくなった。
(やっぱり君が王子様だったんだね)
砂糖とスパイス、素敵な何か
(たとえば桜の花びらとか)
end