エトセトラエトセトラ
空は青みを帯びていた。照らされきれない、町。
まだ蝉も鳴かない。寝ているのだ。みんな。
──ああ。
ビル郡の向こうに朝日が顔を覗かせ始めている。反対側の空が明るんでいる。
しゅわしゅわ。
心が、しゅわしゅわ。
どうしてこんな時間に起きてしまったんだろう。
どうしてこんなに静かなんだろう。
それなのに私の心は泡立っている。
音が聞こえる。しゅわしゅわと。
気泡が弾けて消える音がするのだ。
瞼を閉じると、世界のすべてがソーダ水になったみたいだった。
心が、肌が、ぷつぷつと、泡立ってゆく。
目の前に広がる町も、ぜんぶ。
透き通ったソーダ水の中に閉じ込められてしまった。
窓ガラスに手を着いて、私は耳を澄ませた。
しゅわしゅわ。
悲しいのかしら。
楽しいのかしら。
わからない。わからない。
あの透き通る光の向こうで、恋人達が幸せな朝を迎えるかもしれない。
あの透き通る光のむこうで、孤独な老人が最期の朝を迎えるかもしれない。
いくら考えたってわからない。
それなのになんだって、私のすべては泡立つのだろう。