冗談ばかりの彼氏さま
な、なによ……バカ!
そんな偉そうな言い方しちゃって。
振り払えばいい
また、蹴飛ばせばいい
それなのに
あたしは近づいてくる椋也の顔を見て、瞳を閉じた。
「やだ……っ」
甲高い美夜ちゃんの声が響いた。
あたし……ひどいヤツかも。
美夜ちゃんを可哀想だと椋也を軽蔑しているくせに
どこか見せ付けたい、という気持ちがあった。
あたしは、好かれてるって
期待したかった。
まぶたを固く瞑って
椋也が触れるのをひたすら待つ。
しかし、
彼はいくら待っても来なかった。
逆にくすっと乾いた笑い声が
あたしの耳に届いた。
「ふふっ…結真の顔、真っ赤。冗談だよ、冗談」
その柔らかい声に
ゆっくり目を開ければ、椋也は澄ました顔であたしを見ていた。