冗談ばかりの彼氏さま
「おかえり~結真」
お弁当を食べ終わった翔子が
手をヒラヒラ振りながら
あたしに笑いかけた。
椋也が行ったあと、プリントも配り終わって、真っ直ぐ教室に帰ってきたのだけど…。
あたしは、帰るまでの記憶がなかった。
それくらい
あたしの胸の中のなにかが、
ざわついていた。
だから翔子の声も
今のあたしには耳に届かなかった。
「……?結真?」
「…っえ! あ、ごめん……」
「何かあったの?」
あたしの異変に気づいた翔子が顔を覗きこみながら問い掛ける。
なにかあった……そう言えば
何かがあったんだけど
“気にしなければ”
何もなかった――――。