冗談ばかりの彼氏さま
「んー……っと。 君は誰だっけ?」
「阿部!阿部巽!!」
ええぇ!!? まずそこから!?
椋也が巽のことを知らないことに驚いてしまった。
巽は、この学校ではスポーツマンで有名で目立たない日なんてないくらいなのに……!
「あーそうなんだ?
ごめんね、俺、男の名前はおぼえられないんだよね」
と、天使のような微笑みを浮かべる椋也は周りの女の子たちを、また誘惑させる。
あたしのことを好きっていうくせに、今だって女の子とフツーに一緒にいるし、優しいのはかわらない。
特別だって言ってくれるけど、どう特別なのかが分からない。…だって、他の女の子と何ら変わらないのだから…。
「あっそ。やっぱ女好きってのは本当なんだな。結真のことも、そーゆう扱いなら、とっとと別れてくんない?」
あたしが言えないこともズバズバと言ってしまう巽。
あたしも、これくらい言えたら……きっと。