冗談ばかりの彼氏さま




言い合いはいいから助けてよ~!



「うわあー巽、無責任ね。
じゃ結真、いってらっしゃ~い♪」



「気を付けろよ」




いやいやいやいや!
気を付けろとか言うなら助けてよ!



そんな、あたしの声は届かず
あたしは椋也に引っ張られるままであった。






教室を出て、階段を上っている間に本鈴のチャイムが鳴り響いた。

や、やばいよね?


あたし、これでも
優等生だったんだけど……!←




「ちょっ……椋也、どこまで行くのよ!?」



「んー……じゃあ、ここ。」



そう言って指差したのは、視聴覚室だった。

ここの教室は
滅多に使うことがないので、不良がさぼるには打ってつけの場所。



ガラッの扉を開けた椋也は
あたしが視聴覚室に入ったことを確認すると、素早く扉を閉めて、あたしを壁に押し付けた。




「うわっ…な、なに……?」



「ゆーま♪ アイツ、結真のなに?」




アイツ?

アイツって、巽のこと…だよね?




「巽は翔子の幼なじみで……んんっ!!」



巽の紹介をしようとしたら、瞬時に
椋也の唇であたしの口は塞がれた。



「んーっ!…椋っ……やぁっ…ん…」




椋也の右手はあたしの腰に。
左手はあたしの、後頭部に回されて身動きが敵わない。


でも、このまま……


あたしが流されると思わないでよ!!?




「椋…也の……っ、ヘンタイっっ!!」


ドンっ―――。


その音と共にキスは止んだ。


それは、あたしが
椋也のお腹を力一杯なぐったからだ。




「……痛いよ、結真」


「何でも思い通りになると思わないで!」



つーんと そっぽを向けば
さっきまで怖い顔だった椋也に柔らかい笑みが戻る。




「そんなこと思ってないよ。結真は特別」



そう言って今度は
あたしを優しく抱きしめた。




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