冗談ばかりの彼氏さま

あれ？
さっきまでの弱々しい椋也は
どこいった…？



「りょ、椋也…」



「次に俺の前で“巽”とか言ってごらん？誰がいようといまいと、結真には恥ずかしーい思いをさせるから」



は、はい！！？

なぜそうなる！



「なによっ…、さっきまで悲しそうな顔しといて」



「なんのことかな？
結真の勝手な思い込みでしょ」




……むーかーつーくーーー！！


絶対に絶対に

こんなヤツ好きだなんて、認めない！



「結真？睨んだってだめ。その顔は俺を煽るよ」


「……っ!!/// なに言って…」




「結真、キスしたい。だめ？」



「だ、だめ…」



切なそうな顔したって
今度は騙されないんだからね！



しかし、椋也は
怪しくニヤリと笑ってあたしを見た。




「そっかーそういえば、結真は照れ屋だったね。素直に言えないんだったら仕方ない。じゃあ遠慮なくするよ？」



「え！？意味わかんない意味わかんなーい!!」




そして、あたしは
この冗談ばかりの彼氏にキスをされる。



なぜか今度は……
抵抗する気になれなくて、椋也を受け入れていた。






「やけに素直だね、結真。素直な結真も好き」



「……また冗談って笑うんでしょ」



簡単に騙されないんだから！

そう、思っていた。


だけど……



「結真。俺、結真に冗談は言わないよ。
結真に言うことはすべて本気」


また冗談を……
そう思いながら睨み付けようとしたら、いつも優しく笑う彼が、あまりに真剣な顔をしていたから……



「信じて」



そう言って強く抱き締めてくるから……




あたしは、不覚にも

信じたい、そう思ったんだよ。