冗談ばかりの彼氏さま
掌をぐぐっと強く握り締め、あたしは椋也の顏も見ないで言った。
「今日は巽と帰るの。だから邪魔しないで」
「……“巽”?」
ぴくりと椋也の眉が動いたのが分かった。
あたしは、わざと椋也を怒らせている。そうしないと、あたしが壊れてしまいそうだったから。
「そう。椋也はあたしじゃなくて、他の……人と、帰ればいいじゃない」
「あのね、結真……」
「みんなとあたしは同じなんでしょ?なら、あたしじゃなくても、いいじゃない!」
ねぇ、ここでちゃんと言ってよ。
特別だって。
好きだって。
好きだって言わせてやるよ、って力強く言ってよ。
無理やり、巽からあたしを引き離してみなさいよ。いつもみたいに。
「結真……昼休みのはね……」
そう言いかけた椋也の後ろから、きゃぴきゃぴした明るい声が聞こえた。
「椋也ぁ~、一緒に帰ろ?約束したでしょお?」
昼休みにあたしを取り囲んでいた先輩の一人が椋也を後ろから抱き締める。