冗談ばかりの彼氏さま
その先輩も美人で有名な人で……
簡単に触らせている椋也にイラッとする。
「……そうだね。帰ろうか、まりえ」
まりえ、って……
「……じゃあね、結真。また来るよ」
ほら。簡単にあたしのことなら、諦める。
「なにか事情がありそうね。結真、なにがあったの?」
事情?
「そんなの、ないよ。ただ、椋也にとってあたしが……遊びだっただけ」
それだけ。
「結真……」
翔子の心配そうな声色に、泣きそうになるのを必死で堪える。甘えちゃダメ!
これは自分の問題で、自分で片付けるものだから。
そんなことを考えていると、左手に温かいものが触れた。
それに驚いて、それを見ると巽の手があたしの手を握っていた。
「今日は遊谷なんて関係ない。帰るぞ」
「えっ……巽?……ちょっと!」
「今日は俺のことだけ考えろよ、結真」