冗談ばかりの彼氏さま
翔子の余計な一言がなければ、二人は仲良くなれると思うんだけどなぁー……
「結真」
数日ぶりだった。
君の穏やかな声を聞くのは。
「……椋、也」
微笑んで、あたしだけ見て
ひらひらと手を振る彼は、少しずつあたしに近づいてきた。
「久しぶりだね、結真。寂しかった?」
「……っ」
椋也から会いに来てくれたことなんて、別に嬉しくないし。寂しかったわけでもないもん……!
そう心の中で叫ぶ。
「……可愛い、そんな睨まないでよ。いじめたくなるでしょ」
「何しに来たのよ……」
「好きな子に会いに来たらだめなの?ゆーま、向こうで話そ」
ふわりと笑った椋也にドキッとしながら
あとを着いていく。
二人になったら言うんだ。
たとえ、椋也が冗談でからかっていたとしても
あたしへのあの言葉たちが嘘だったとしても……あたしはこの人に伝えなくちゃいけないの。
後ろを振り返ると、翔子と巽が拳をあたしに向けて笑っていた。
それは、「がんばれ」という意味の態度表現だった。