冗談ばかりの彼氏さま



「そんなことが……」



椋也が怒りを他人に向けるだななんて、想像できない。



「……よっぽど結真のことが心配だったのよ。結真は、もう少し遊谷くんを信じなさい。話し合えばきっと結真の悩みは解決するわ」



「翔子……ありがとう」




あたし、まだ何も翔子に話していないのに……あたしが悩んでるって分かっていたんだ。



なんか……心がすごく、温かい。



「……結真」




あたしを呼ぶその声に、翔子と同時に振り返る。
すると、翔子が


「あらあら、彼氏さまのご登場ね。あたしは、帰るわね結真。また明日」




ひらひらと手を振って
椋也とは入れ違いに、翔子は帰っていった。


保健医も、このあと職員会議があると言って出ていってしまった。


急に二人きりになって
なにを話せばいいのか分からず、あたしは俯いた。




「りょ、うや……怪我はない、の?」




ちらりと椋也を見てみれば、怪我はなさそうだ。
……よかった。

椋也に怪我がないなら、それだけで……





「結真。俺の心配してる場合?」



「え?」



ドサッ。





< 97 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop