冗談ばかりの彼氏さま
椋也があたしのカバンを床に置く音と共に
あたしは
ぎゅっと抱き締められた。
それは、とても力強く……震えていた。
「馬鹿だね、結真。なんで庇うの」
「椋也……」
「死んじゃうのかと……思った」
そう言ってあたしの肩に顔を埋める椋也をあたしからも抱き締め返す。
肩が濡れるのを、感じたけど
あたしは何も言わなかった。
「あたしが簡単に死ぬわけないでしょ。でも、椋也が無事でよかった」
「俺はちっとも良くないんだけど?
頭から血出して倒れて、気を失って……もう無茶なことしないで。あ、これ命令だから」
「ぁ、はい……」
命令なんだね、これも(笑)
やっとの思いで椋也の顔を見れば
穏やかに笑っていた。まるで安心したというように。
こんな優しさも、あたしだけのものだったら……良かったのに。