‐彼と彼女の恋物語‐
焦って若干大きくなった熊谷さんの声を引き剥がすようにして液晶画面を連打するといつの間にか電源が切れていた。
だらりと垂れた両手から機械が滑り落ちて静まり返った部屋に妙に響く落下音。
「終わ、った」
もうあの部屋に行くことも白猫に甘えられることも雇い主に昼寝をしろと言われることもない。
そんなこと、どうってことない。だって彼女は彼と出会う前はずっとひとりだったのだから、また元の生活に戻るだけ。
決して、―――会いたいなんて思ってない。
「(大丈夫、大丈夫、人と関わらないのなんて慣れてる)」
だから、
だから、
だからだからだから。
泣いてなんか、いられない。
なのに、
なのに、
なのになのになのに。
「っ…(涙が、っ止まらない)」
『ねぇ、コト。離れないでね』
「っつ…せ、んせ、先生、…ごめ、なさい…ごめんなさい」
好きなって、ごめんなさい。