‐彼と彼女の恋物語‐
スタッフルームに設置されたソファーに腰をおろせば自然と疲労感が襲ってくる。例え無意識だとしてもまともに睡眠もとっていなければ当たり前だろう。
そうでなくても彼女は食事が面倒くさくてよく抜いたりしているから自分で思ってる以上に身体は疲れているはずだ。
朝早くからの出勤で頭は妙に冴えていて天井を見上げれば不思議な浮遊感が脳内を彷徨いていた。
それから暫くすると客足が途絶え、昼時なのにお店を一時閉めた優子さんがコーヒーとサンドイッチを2セット両手に抱えて現れた。
「お疲れ様、午後もよろしくね」
「はい、ありがとうございます」
優子さんはテーブルを挟んだ向かい側に腰掛けると切り揃えられた髪をふわりと揺らした。
二人の間に煙たつ香りに彼女は手を伸ばして口にする。自分が淹れるのとは格段に味も質も違うそれ。
だけど、やっぱり彼と飲んだものが一番美味しいと脳裏でうっすらと考えてしまい、止める。
「(先生なんて、知らない)」