‐彼と彼女の恋物語‐
勢い任せで熱いコーヒーを喉に流し込む。一瞬、つかえるような痛さに襲われたけどぐっと耐えて飲み込んだ。
「小音ちゃん、どうかした?」
「いえ、なんでも」
そう…と呟くが怪訝そうな顔をして首を捻る。それでも優子さんは問い詰めはせずにかわりにコーヒーを注いでくれた。
彼女がこの店で働きはじめてからこうして優子さんと二人で昼食をとることが自然になっていた。
シフトが朝から入っているときだけなのだがそれでも無駄に思案する時間があるより優子さんの話を聞いて気にしないほうが楽だ。
優子さんは笑顔で他愛もない話をしてくれる。そういう性格がお店の利益にも繋がるんだろうとどこか遠くで思う。
今日も常連さんや、ある会社のあるひとの話。得意なコーヒーの話をしてくれた。
結局、話が終わったのは午後2時だったりする。女子はなにかとだらだらしてしまうときがあるのだ。
「今日はわりかし忙しいかもしれないから、疲れたら勝手にあがってね」
「大丈夫ですよ、明日は休みですし」
「ありがと小音ちゃん」