‐彼と彼女の恋物語‐



よし、と小さく息を吐き出した優子さんを合図にお店は再開する。



「お店開けよっか」

「そうですね、じゃあメニュー変えてきます」



スタッフルームをカップと皿を持って出てキッチンに置いて側に立て掛けてあるボードをもって表から出る。


店先にあるのは持ってるのと同じようなボード。それを午後のメニューが書かれたのとすり替えて飛ばないようにと気持ち程度に押さえて。



「(こんな感じか)」



うん、と納得したところで今日はもう使わないであろうボードを持って店内へ戻ろうと踵をかえ―――……ようとして、一瞬だけ爪先が揺れる。



が、その足はくるりと扉に向かう。



「(睡眠足りてないな)」



まさか、彼の姿が見えたなんてわけないのに。今日は薬でも飲んで寝てしまおうと考えながら上品なノブに手をかける。


指先に力を込めたら何故か心臓が一瞬だけ高鳴った、風邪でも引いたかな。

























「迎えに来たよ、コト」



―――ああ、やばい。声が聞こえるなんて重症じゃないか。


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