‐彼と彼女の恋物語‐
なぜ彼はそこまでスマートにセクハラをするんだろうか。キスなんて欧米だけだと思ってた彼女にとっては唖然以外の何物でもない。
「そうだ、餃子は羽根つきね」
「あ、はい」
とりあえず、だ。今は仕事をしよう、餃子は軽く手抜きになってしまうけど。
ぐっと伸びをして素早く立ち上がり気だるい身体を震い立たせる彼女。頭は既にいかに手抜きをできるか、である。
「(そのかわりチャーハンはとびきり美味しいものを)」
にゃー、とどっかから鳴き声が聞こえる。白猫は彼が大好きだ、きっと甘えにいったのだろう。
そんなことを頭の片隅のさらに片隅で考えて、てきぱきと食材を選んで調理する。
彼女は雇い主以上にキッチンを使いこなせるだろう。この間だって「ねー、ケチャップどこ?」なんて電話をしてきた、出勤前に。
それほどまでに彼は彼女を頼りにしているのか、はたまたただの能天気エロなだけなのか。
未知数の存在である。
そんなことを考えていれば種が出来ていて、手抜きを誤魔化すように無駄に綺麗につつんでみたりする。