‐彼と彼女の恋物語‐



閉店はいつも優子さんの気分で決まる。その日の天気や客入りだったりただ単に休みたいからだったり、まさにフリーダム。


今日だってもしかしたらすぐに終わるかもしれないし終電の時間までやるかもしれない。


このぶんだと優子さんはあと少しで店を閉めそうだ。



「(どうしよう、バレずに逃げなくちゃ)」



店が閉まれば当然彼女も帰宅の時間だ。彼は簡単に目をはなすような男ではないしそれ以前に捕まったら帰らせてもらえないかもしれない。



彼の自宅に連行されるのが目に見えている。



「(どうしようどうしようどうしよう…)」



半年間見つからずに過ごしてきたのに、静かに気持ちを抑えてきたのに。


また、好きが溢れてしまう。



そうなる前に彼の前から再び姿を消してしまわなければ。邪魔なんかしちゃいけない。



ひとりでいなくちゃいけない。


だけど、神は手をさしのべる。



「小音ちゃん、今日は上がっていいよ」



さぁ、タイムオーバーだ。



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