‐彼と彼女の恋物語‐
息が止まるかと思うくらいに緊張が高まって、何でか泣きそうになってくる。
彼にはあのひとがいて、自分はひとりで、一緒にいてはだめなのに。
どうして、上手くいかないの。
「……優子さん」
「次は明後日だよね、待ってる」
「優子さん」
「時間は午後からで」
「っ…優子、さん」
だめなんです、エプロンの裾を震える指先で握り締めてこちらを優しい瞳で見据える優子さんに向かって首をふる。
その様子に眼鏡を外した彼が眉を寄せて険しい表情を見せているが今は彼を気にする余裕なんかない。
というか関わったらもう抜け出せない気さえする。
それなのに優子さんは彼に近づくと何かを耳打ちをする。そうすれば彼は怪訝そうな顔をするもゆっくりと立ち上がる。
一瞬一瞬を黙って見ないふりしていればを喉元まで涙が込み上げてくるせいで唇まで震えてる。ふるふると頭をふって束ねた髪を揺らした。
ちらり、優子さんは店内を確認すると今にも泣き出しそうな小さく見える彼女をスタッフルームに促した。