‐彼と彼女の恋物語‐
「締め切り前に出せたよ。さっき」
「そうですか(締め切り前だから最近変態ぽかったのか)」
「なんで今日熊谷さんに呼ばれたか気にならないの?」
「別に」
彼は書いたものは全てメールで送っているため直接出版社に行くことは滅多にない。
何かあったら来るのは担当のひと。今回は何か行かなくちゃいけない理由があったのだろう。
しかしそこまで興味があるわけではない彼女あまり気にならない。
苦笑を浮かべて少し考え込む素振りを見せる彼は蓮華を皿に置いて口を開く。
「なんかね、雑誌に出て欲しいってモデルの仕事がきたんだよね」
「……………先生に」
「そう、先生に」
一瞬、悲しそうに見えたのは彼女の見間違いのせいなのか。
「まだ返事は返してないんだよね。考えてくれって」
「そう、ですか」
「コトは―――どう思う?」
「……………」
「俺が雑誌に出るの、イヤ?」