‐彼と彼女の恋物語‐
「(……嵐のようだ)」
「騒がしいね」
「…そうですね」
テーブルに散乱するケーキが物語っている。
「片付けますね」
「んー、じゃあやろっか」
さりげなく頭を撫でていく彼は何事もなかったように食器類をさっさと運んでしまう。
「コトー、ケーキしまって冷蔵庫に入れといてくれるー」
「あ、はい」
どきどきする心臓を気にしながらも甘い香りのするそれらを箱にしまっていく。
「(あー、まじ可愛い)」
「(見てられてる…)」
ケーキ同様、甘い雰囲気に流されまいと赤くなる顔を振って頭を整理する。上手く自分のペースに戻せない。
このままでは一生彼に振り回される。
「あ、ねぇコト」
「…なんですか」
綺麗顔をこちらに向けてカウンター越しに微笑んでみせる彼はそのままの笑顔で口を開いた。
「結婚、しようか」
一生、振り回されても
いいのかもしれない。
「―――そうですね」
ケーキをテーブルに置き去りにして、彼女はキッチンに立つ彼に抱きついた。
振り回されて、あげよう。