‐彼と彼女の恋物語‐
その言葉に酷く優しく笑った彼はその答えをしっていたかのように見える。
「そっか、ありがとう」
「気にしないでください」
「うん、参考までにだよ。ありがとね」
何に納得したのかよくわからないが蓮華を持つ仕草はもう話の終わりを示してる。
と、ふと思い出したようにまた口を開く。
「美味しいよ、今日も」
「……ありがとうございます」
彼女の不動のペースはこういう具合にぐちゃぐちゃに崩されていく。それが嫌いじゃない彼女にとってはそんな自分が一番の厄介者であることには気づかない。
それから数時間後、仕事部屋で本を読んでいた彼女を振り向いた彼が愛しげに見つめて立ち上がる。
「コト」
「はい?」
顔をあげた彼女の白い頬に指を這わせて額と額をくっつける。
「………セン、セ?」
「俺やってみるよ」
「―――――」
「コトがいたらさ、俺」
「―――――」
「何でもできる」
掠めるように目尻にキスをしてそのまま華奢な彼女を抱き締める。
「だからさ、コト。ずっと側にいてね」