‐彼と彼女の恋物語‐



「みゃーあ」

「静かにしてね、コトは今日遊べないから」



家につきビニール袋をわきに落としつつすっかり寝入っている彼女をベッドに寝かせればするりと彼女と毛布の隙間に入り込む白猫。



分かっているのかいないのか、ミーヤは顔だけ出すと彼女の身体に擦り寄るようにして身体を預けた。



その光景に思わず苦笑。飼い猫は主人に似るというのは見かけだけかと思っていたがどうやら思考まで似るらしい。



それから彼はビニール袋の中から帰宅途中に買った冷却シートを彼女の額に貼り、熱で乾燥した唇をそっと撫でるとまるで潤いを与えるように、


キスをした。



「早く治して、スキって言ってね」



そう囁き、優しく微笑むと彼は寝室を後にした。


去り際にもったビニール袋の中には数種類の薬と、彼女が好きなチョコレート、それに彼女が好きなオレンジのゼリーである。



彼の脳に、身体に、心に、常に存在している彼女。



「(あーもう、コトがいなきゃ本当に生きてけない)」



彼にとって世界の中心とは彼女なのである。



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