‐彼と彼女の恋物語‐
同居物語。
肌寒い冬の朝、彼は高そうな毛布を手繰り寄せると二度目の眠りにつこうと再び脳を停止させようと枕に頭を沈める。
が、即座に起き上がる身体。目なんか一瞬で覚めた。寝てる場合じゃなかったのだ。
「コトが来る日だ…」
そう、彼と彼女は今日からこの部屋で同居するのだ。
―――――――………
「荷物はこれで最後?」
段ボールを抱えながら振り返った彼は眉を寄せて怪訝そうな顔をする。その理由に気づいている彼女はあえてのスルー。
「はい、それで全部です」
それが何か、とでも言いたげな雰囲気に彼は首をふる。
「20歳の女の子の私物が段ボール3つって、だめだろ」
開けっぱなしのトランクにそれを置いて小さなため息を吐く彼。そうしたくなるのも致し方ない。
彼女との同居のために意気揚々と荷物はこびをしにきたら荷物はたったの段ボール3つ。
「(山下に頼んで服買わせよう…)」
元々、欲のない性格のせいもあるだろう。が、彼女のそれは酷すぎるのだ。もっと欲しがって生きてほしいと彼は常々思う。
「これじゃクローゼット意味ないじゃん」
「………すいません」
「違う、ごめん。もっと我が儘になれってこと」
「…そうですか……」