‐彼と彼女の恋物語‐
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いつものように出勤したある日のこと。寝ているだろう雇い主を気遣うように、ゆっくり鍵をさし込むといつもと違う感触が。
「(うそ……でも設備良いし、警備員だって…)」
妙な不安に刈られながらも彼女はその手をドアノブにのせた。
カチャリ。誰かがいるかも知れない恐怖と彼が寝ているからという無駄な配慮。
入ったいつもの玄関にはいつもの大きめな革靴と…―――それに並ぶ見覚えのない高そうな靴が。
「(え……)」
軽く思考停止。高そうな靴を履いた泥棒がこの世にいたのか、なんて少しずれたことを考える。
と。足許に擦りよってくる小さな白猫を発見。
「ミーヤ……」
なぜかミーヤの姿を確認できて酷く安心を覚える彼女は手足の長い白猫を抱き上げてぎゅっと抱き締める。