‐彼と彼女の恋物語‐



「わ、めっちゃいい匂いしますね!!!さすが小音さん」

「鍋かー、久しぶりだなー」



―――インターフォン後、一階に繋がるオートロックを確認したところ宅配でーすと少々気の抜けるような声音が聞こえ彼は渋々、解除した。



「宅配、ですか」

「そうみたい」



なんて話していたら玄関口から喋り声が。なんだなんだと思って彼がそこにいくと。


やけに黒ばかりを着たやつと、やけにきらびやかなやつが。そこで冒頭へと戻る。



「やっぱ冬に一人鍋は辛いですよねー」

「お前ふられたんだっけ、無惨だな」

「いや、もういいじゃないですかあああ!」



―――あの二人が、騒いでいた。



「………何してんの、あんたら」



息を吐いた彼は堂々と不法侵入をかましてくれた二人へと視線を向ける。


それに焦ったように目を見開くのは相変わらず美しいモデル、山下あずさ。



「…………敬さん……」



山下あずさにとって彼は自分を苦痛の時間へと追い詰める悪魔のようなやつである。自業自得の故なのだが。



が、しかし。その隣にはくせ者、熊谷さんが。



「いや冬じゃん、寒いじゃん、小音ちゃんのご飯食べたいなーって」

「帰れ、コトに見つかる前に。特に山下」

「なぜ私だけええ!?」



あーだこーだと喚く二人を追い出そうとすれば既に靴を脱いでいたらしく暴力反対!お前は鬼だ!と言われる始末。



そんなに騒いだら彼女に聞こえてしまう。と警戒したときには既に遅し。



「敬さん、どうしました?」



ミーヤを足元に絡み付けた彼女が首を傾げながら玄関にきた。



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